2011/04/22
[北陸その1]山下家512号室・ドア編
週前半、取材で北陸にお邪魔した。
いろいろ経緯があって、初日、石川県加賀市の山代温泉街にある大型旅館「加賀の本陣 山下家」に泊まった。
部屋番号書いちゃうよ。512号室。どうか検索エンジンに引っかかりますように。
チェックイン時にフロントで鍵を渡され、エレベーターで5階に上がった。
客室フロアである。絨毯の廊下を歩き回って部屋を探したが、見つからんのである。512号室が。どこにも。
515号室のドアはすぐに見つかった。
当然、3つ先が自分の部屋だろう。数歩歩くと右手に514号室のドア。さらに歩くと513号室が出てきた。その先は曲がり角になっている。
曲がった瞬間に我が部屋の入り口、のはず。だが視界に入ってきたドアには「503」と書かれている。
おぉ、意表をついてきよったな、と感心しつつ歩を進めると、次は502、その横は501号室。その先は非常口用の鉄扉だった。504から512が、ないのである。
一瞬、悪寒が走った。自分は怪談の世界に入り込んでしまったのではないか。存在しない部屋のカギを受け取ってしまったとしたら、フロント係の女性は何者だったのか?
最初に見つけた515号室の前まで引き返した。落ち着いて周りを見渡そうじゃないか。よーく見たところ、廊下の向かい側にも客室の入り口があった。
大きくて、しつらえが豪華なので宴会場の類だと思いこんで見過ごしていたが、504と記されている。隣には505号室の入り口が見える。
しかし505号室の横は壁しかなかった。壁の先は、宿泊客が浴衣姿でガヤガヤと行き交うメーン廊下になっている。
よもや、隠し扉か?
客を試そうってわけか。面白いじゃないか。
忍者屋敷的な仕掛けを探しながら再び501号室の先まで歩いてみたが、新たな扉は見つからない。まさかと思って天井を見上げたが、普通に照明が光っているだけだった。
目の前の行き止まりに、何の表示もない無機質な鉄扉。まさかこの向こう? いやいやいくらなんでもそれはないんじゃないか。いや、しかし。金属のノブをひねって重い扉を押すと、そこは非常階段だった。
これは降参せざるをえないかも。携帯でフロントに電話して「部屋どこ?」と言えばゲームオーバーである。
エレベーターの降り口に戻って、出直そう。
その途中、メーン廊下まで戻ったときである。来るときには気付かなかったのだが、向こう側の壁に物置か従業員控え室のような雰囲気のドアがあって、ここに、なぜか「512」と表示されているのである。
大浴場につながる通路がすぐ脇にあり、フロア内でも、客の往来が最も激しい場所の一つだ。
うひゃあ、と思ったが、朝夕食(バイキング)付で1泊5700円という、温泉としては破格の安さである。しかも、こんな変な場所にある部屋に泊まるなんて、滅多に経験できるものではない。
ドアノブに鍵を差し込んで回した。すぐ後ろを、浴衣姿の中高年の集団が大声で話しながら歩いていく。この集団から見れば、物置に備品を取りに入る従業員としか思えないであろう。
部屋に入ると、また別の驚きが待っていたのである。
(後編に続く)
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